IT資産管理台帳の作り方:兼任担当者が最初にそろえる3つの表
総務や経理と兼任で、会社のPCやソフトウェアの管理を任された人に向けた記事です。
結論:台帳は「機器」「ライセンス」「割当」の3つに分ける
IT資産管理台帳の目的は、次の3つの質問にすぐ答えられるようにすることです。
- どのPCを、誰が使っているか
- 保証がいつ切れるか
- ソフトウェアのライセンスが足りているか
このために、記録するデータを次の3つの表に分けます。
| 表 | 1行に書くもの | 例 |
|---|---|---|
| ハードウェア台帳 | 機器1台 | PC-0001(ノートPC)、SP-0001(スマホ) |
| ライセンス台帳 | 契約1件 | SW-0001(オフィスソフト、10ライセンス) |
| ライセンス割当 | 「誰にどのライセンスを割り当てたか」1件 | SW-0001 を利用者01に割り当て |
この3つがあれば、台数の集計や期限の一覧は、あとから数式で作れます。
なぜ3つに分けるのか
1枚の表にまとめると、次のような問題が起きやすくなります。
- ライセンスの数が合わなくなる:1つの契約を何人もが使うため、PCの行に「使っているソフト」を書くと、同じ契約の情報が何行にも散らばります。契約の本数を変えたとき、直す場所が増えます。
- 割当の履歴が残らない:異動や退職でライセンスを外すとき、行を消すと「いつまで誰が使っていたか」が分からなくなります。割当を別の表にして「解除日」を書けば、履歴を残したまま、今の割当数だけを数えられます。
- PCを使わないライセンスを書く場所がない:スマホ用のアプリや、人に割り当てるクラウドサービスの契約は、PCの行には書けません。
最低限そろえる項目
最初から全部の列を埋める必要はありません。まずは「必須」の列だけ埋めて、残りは分かったときに書き足します。
ハードウェア台帳
| 列 | 必須 | 書き方 |
|---|---|---|
| 管理番号 | ○ | PC-0001 のように、種別ごとの記号+4桁の番号 |
| 種別 | ○ | ノートPC/デスクトップPC/スマホ/タブレット/モニター/プリンター/ネットワーク機器/その他 から選ぶ |
| メーカー・型番 | 本体のラベルや納品書から | |
| シリアル番号 | 修理の依頼や、あとで機器を突き合わせるときに使う | |
| 購入日・保証期限 | 日付として入力する(文字で「来年3月」などと書かない) | |
| 使用者・部署・設置場所 | 共用の機器は設置場所だけでもよい | |
| ステータス | ○ | 使用中/予備/修理中/貸出中/廃棄予定/廃棄済 から選ぶ |
| 備考 | パスワードや個人の連絡先は書かない |
ライセンス台帳
| 列 | 必須 | 書き方 |
|---|---|---|
| ライセンスID | ○ | SW-0001 のような番号 |
| 製品名 | ○ | 契約書や管理画面に出ている名前 |
| 契約形態 | ○ | サブスクリプション/買い切り/無料 |
| 保有数 | ○ | 契約しているライセンスの数(0以上の整数) |
| 割当数 | 自動 | ライセンス割当の表から数える |
| 残数 | 自動 | 保有数 − 割当数 |
| 更新日・年額費用 | サブスクリプションの更新を忘れないために | |
| 管理者アカウント | IDやメールアドレスだけ。パスワードは書かない |
ライセンス割当
| 列 | 必須 | 書き方 |
|---|---|---|
| ライセンスID | ○ | ライセンス台帳にあるIDから選ぶ |
| 使用者 | ○ | |
| 割当日 | ○ | 使い始めた日 |
| 解除日 | 外した日。空欄なら「割当中」 |
手順
1. 管理番号のルールを決める
管理番号は、台帳と実物を結びつけるための番号です。次のように決めておくと迷いません。
- 種別ごとに記号を分ける(例:PC=ノートPC・デスクトップPC、SP=スマホ、TB=タブレット)
- 番号は4桁にそろえる(PC-0001)。並べ替えたときに順番が崩れません
- 廃棄した機器の番号は、ほかの機器に使い回さない。過去の記録と混ざらないようにするためです
- 番号を書いたラベルを機器に貼る
2. 機器を登録する
最初の登録が、いちばん手間のかかる作業です。一度に全部そろえようとせず、次の順で進めます。
- 手元にある購入の記録(納品書・請求書・購入履歴)から、機器の一覧を作る
- 管理番号・種別・ステータスの3つだけを埋めて、全台を1行ずつ登録する
- 機器を見て回るときに、ラベルを貼りながら使用者・設置場所・シリアル番号を書き足す
- 保証期限は、メーカーの保証確認ページや購入時の書類で確かめて入力する
3. 保証期限を「状態」の列で知らせる
保証期限の列を毎回目で追うのは大変です。隣に「保証の状態」の列を作り、数式で文字を出します。色だけでなく文字でも出しておくと、印刷したときや、色の区別がつきにくい人にも伝わります。
例として、ハードウェア台帳の列を次のように置いた場合の数式です(列の位置は自分の台帳に合わせて読み替えてください)。
- C列:保証期限、D列:保証の状態、F列:ステータス
D2に入れる数式:
=IF(C2="","",IF(F2="廃棄済","",IF(NOT(ISNUMBER(C2)),"日付エラー",IF(C2<TODAY(),"期限切れ",IF(C2-TODAY()<=90,"期限間近","")))))
この数式は、次のように判定します。
- 保証期限が空欄、またはステータスが「廃棄済」なら何も出さない(廃棄した機器まで警告しないため)
- 日付として読めない値なら「日付エラー」
- 今日より前なら「期限切れ」、今日から90日以内なら「期限間近」
あわせて条件付き書式で、「期限切れ」の行を赤、「期限間近」の行を黄色にしておくと、開いたときにすぐ目に入ります。
4. ライセンスの残数を自動で出す
ライセンス台帳の「割当数」は、ライセンス割当の表から数えます。このとき、次の2種類の行は数えないようにします。
- 割当日が未来の行(まだ使い始めていない)
- 解除日が今日以前の行(もう外した)
例として、ライセンス台帳のA列にライセンスID、ライセンス割当の表のA列にライセンスID・C列に割当日・D列に解除日を置いた場合、ライセンス台帳の割当数の列(2行目)に入れる数式です。
=COUNTIFS('ライセンス割当'!$A$2:$A$1000,A2,'ライセンス割当'!$C$2:$C$1000,"<>",'ライセンス割当'!$C$2:$C$1000,"<="&TODAY(),'ライセンス割当'!$D$2:$D$1000,"")+COUNTIFS('ライセンス割当'!$A$2:$A$1000,A2,'ライセンス割当'!$C$2:$C$1000,"<>",'ライセンス割当'!$C$2:$C$1000,"<="&TODAY(),'ライセンス割当'!$D$2:$D$1000,">"&TODAY())
どちらも「割当日が空欄でなく、今日以前」の行だけを対象にし、前半は「解除日が空欄の割当」、後半は「解除日が明日以降の割当」を数えています。残数は「保有数 − 割当数」で出し、マイナスになったら赤にします。
注意:COUNTIFS は、検索する値に「*」や「?」が含まれるとワイルドカードとして扱います。ライセンスIDには英数字とハイフンだけを使ってください。
5. 割当の表を点検する
ライセンス割当の表は、入力ミスがあっても残数の数字だけでは気づきにくい表です。月に1回など時期を決めて、次の点を確かめます。
- 割当日が空欄の行がないか
- 日付の欄に文字(「来月」など)が入っていないか
- 解除日が割当日より前になっていないか
- 同じ人に、同じライセンスが2回割り当てられていないか
- 退職・異動した人の割当に、解除日が入っているか
よくある失敗
- 1枚の表に全部書く:上で書いたとおり、ライセンスの数や割当の履歴が追えなくなります。
- 備考にパスワードを書く:台帳は共有されることが多いファイルです。パスワードや個人の連絡先は書かず、パスワードの管理は別の方法にします。
- 自動計算の列に手で数字を入れる:数式が消え、その行だけ集計から外れます。自動計算の列は見出しの色を変えるなどして、入力する列と区別します。
- 見出しの名前を途中で変える:集計の数式や、ほかの人が作った仕組みが見出しの名前を頼りにしている場合、動かなくなります。
- 最初に完璧を目指す:全部の列を埋めてから使おうとすると、登録が終わりません。必須の列だけで使い始め、少しずつ埋めます。
無料のテンプレートについて
ここで説明した3つの表に、保証の状態・ライセンスの残数・割当の状態の自動計算と、台数や費用を集計するダッシュボードを入れた「IT資産管理台帳」を、社内IT道具箱で無料版として準備しています(配布準備中)。Googleスプレッドシートで使う形ですが、Excelでも使えるように作っています。
期限のメール通知や棚卸しの記録などを加えた有料版も準備中です。内容は紹介ページでお知らせします。
生成AIで台帳を自作するか、テンプレートを使うかで迷っている場合は、次の記事で違いと確かめ方を説明しています。
まとめ
- 台帳は「機器」「ライセンス」「割当」の3つの表に分ける
- 最初は必須の列だけを埋めて使い始める
- 保証期限とライセンスの残数は数式で自動にし、色だけでなく文字でも知らせる
- 割当の表は、時期を決めて点検する
この記事の内容は一般的な参考例であり、法的助言ではありません。導入にあたっては自社の状況に合わせて内容を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。数式による判定は入力されたデータにもとづく参考情報です。保証期限や契約内容は、メーカーや契約先の情報で確かめてください。